つかう人の話

ame : 雨宮 三起子さん

歯科医師、アーティスト

インスタグラムに並ぶ写真やイラスト、美しい描き文字に惹き寄せられるファンが後を絶たない@amelaboこと雨宮三起子さん。アカウント開設から10年、その暮らしの中から紡ぎ出されたアートの数々が一冊の本に。創作活動のきっかけや、それらの魅力について聞きました。

――季節感のある風景や部屋の一角を切り取った写真、手描きのイラストがとても印象的ですが、写真やイラストを始めたきっかけは?

写真は、大学生の頃に父からコンパクトカメラをもらったのがきっかけです。いつも持ち歩いて、自分がいいなと感じた景色や部屋の中でも、思うままに撮っていました。私は子どもの頃から“もの”が好きだったのですが、買ったものをお店のディスプレイのように置くのではなく、どう置くと自分らしいのかなって、それを確かめながら撮っていたように思います。

イラストも、子どものころからいいなと感じたものをよく絵に描いていました。祖父母が焼き物やアンティークが好きでたくさんのものを集めていたことも影響していたかもしれません。それと、大学の歯学部で勉強していた頃は、歯のスケッチも課題のひとつでしたので、そんな経験も生かされているのかなとは思います。

――イラストを素敵に描くためのコツはありますか?

絵を描くときは、下書きはせずに、当て所なく一気に描きます。1枚を描く時間も、5分か10分、長くても30分……私って実は“いらち”(せっかち)なんです(笑)。
コツがあるとすれば、上手く描こうとしないこと、途中で諦めないことでしょうか。いちばん大事なことは、想像して描かないこと。たとえ線が歪んでも、対象物から目を離さず、見えているままを描くんです。描き終えて、“好き”と思える形をしていれば、それが正解。「いいね」と言ってくれる人がいれば、なお嬉しい。
と言いつつ、そういう私こそ実はきちんと描けるかどうか毎回ハラハラ。でも、そのスリルと、描き終えたときの満足感がたまらないんです。

――雨宮さんのアートのなかでは、カリグラフィーもまた印象的ですが、いつ頃始められたのですか?

文字を描くのも好きで、最初はサインペンでレタリングを楽しんでいました。あるとき、描いた文字を薄紙にプリントアウトして、それで手作り石鹸を包んだら、インスタグラムでとても評判が良くて。いつか本格的にカリグラフィーを始めたいなと思っていた矢先、憧れていたカリグラフィーアーティストのヴェロニカ・ハラムさんとインスタグラムでお互いにフォローしていたことがわかったんです。イベントで来日した際にお会いしてすぐに意気投合。“一緒にワークショップやりましょうよ”って誘っていただき、私は手ほどきを受けながらも辿々しい英語でヴェロニカさんの通訳を兼ねる羽目に。とてもいい思い出です。
こうした、インスタグラムを通じた運命的な出会いが、私にはたくさんあります。
そもそも、今の自分の活動自体がインスタグラムなしに叶うことはありませんでしたし、今回「ameファンによるameファンのための本を作りましょう」と声をかけてくださった編集者さんも、もともとヴェロニカさんの本を手掛けた方。本の素敵なデザインを手掛けてくださったデザイナーさんも、すべてインスタグラムから生まれたご縁でした。
友達からは“インスタグラムのわらしべ長者”と言われています(笑)。

――『MDノート』の大ファンとのことですが、どのようなところが魅力ですか?

『MDノート』の好きなところはまず、無地であること。ペン先が引っかからず描きやすくて、インクもにじまないし、裏写りもなくて。あと、大好きな“ブーブー紙”に包まれているところ、これまた大好きな文庫サイズというところもお気に入りです。
手描きの文字や絵にはその人らしさが出ると思うのですが、『MDノート』ではそれをより実感できます。過去のページを遡って「このときはちょっとしんどかったな……」って思い馳せるのも手描きだからこそ。その時の感覚や匂いまで戻ってきますね。活字になっていたりスマートフォンのデータだったりしたら、そこまで戻ってこないかなと思うんです。

もう一つ、『MDノートジャーナル 1日1ページ』のきれいなコデックス装はとても魅力的ですね。実は10年くらい前に自分で本を製本できないかと思って購入した本に書いてあって、いつか自分の本を作る時がきたら、絶対にコデックス装にしようって決めていたほど。今回の本の仕上がりもちょうど『MDノートジャーナル』と同じくらいの佇まいになっていて、とても運命を感じています。

――素敵な写真やイラストを拝見していると、素敵な暮らしぶりが窺えます。身の回りのものを選ぶときに意識していることはなんですか?

基本的には、“素敵!”って恋しておうちに連れて帰る。それがルールといえばルールですが、最近はさすがにスペース的な問題も考えるようになりましたので、実際に使っている様子、家にある様子が思い描けるものだけを選ぶようにしています。

――最後に、これから挑戦していきたいことはありますか?

これからも描くことは仕事にしていきたいなと思っています。具体的には、何かのモチーフだったり、あるいはモノグラムだったり――その人が本当にしたいと思っていることや好きなものを引き出せるようなものを描けたらいいなと思っています。

ame : 雨宮 三起子

歯科医師、アーティスト。
神戸市内で歯科医院を開業し、歯科医師の傍らアーティストとして活動中。学生時代から続けている趣味の写真と手書きの文字やイラストで、カレンダーやプロダクトを手がける。写真や文字のワークショップや個展、百貨店カタログやイベント企画などの活動をしている。日常を独特のセンスで切り取ったインスタグラムの投稿が人気。

http://amelabo.blush.jp/
https://www.instagram.com/amelabo/


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