つくりのこだわり

ノート

ノート

紙の魅力を最大限に伝える
ギリギリまで余計なものを削ぎ落とした
究極のスタンダード

レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した言葉にこんなものがあります。

「洗練を極めていくと、単純さに辿り着く」

これを一聴すると、加飾ではなく、“洗練”、つまり要素をそぎ落とすことは、個性を失う可能性をはらんでいると思われるかもしれません。

しかし、この場合の“単純”には、あるべきものだけを残し、それらを最大限に活かし構成するという意味が含まれています。

究極のシンプリシティを実現したものはやがてスタンダードになり、逆に、絶対的な個性が生まれるのです。

『MDノート』の表紙は一般的なノートとは違います。

それは、通常のノートでは表紙の下にあたる
「ハネ」という部分を、そのまま表紙にしていること。

外側を、もう1枚の紙やカバーで包むことで起こる開きの悪さが、書き心地を阻害すると考えたからです。

ミニマムに仕立てられた『MDノート』のデザインアイコンとなったのは、表紙の下に隠れていることが多い寒冷紗。

この寒冷紗は、一般的に背表紙の補強として用いられる布。

さりげない格子状の網目が絶妙なアクセントとなり、
『MDノート』の佇まいがつくられ、同時に、しなやかに曲がる抜群の開き具合を両立させたのです。

美しさと機能性を伴った『MDノート』は、
ダ・ヴィンチの言葉に則ったノートと言っても
過言ではないかもしれません。

ここからは、『MDノート』がつくられる工程を
ご紹介していきます。

無垢な佇まいの奥に隠れているさまざまな工夫。
その一端を知れば、さらなる愛着を
もっていただけるはずです。

工程は大きく分けて9つに分けられます。

まずは折り作業。大量に積まれた「MD用紙」が一枚ずつ機械に送り込まれ、製本をする上での“折丁”と呼ばれる単位で折られていきます。

『MDノート』の特徴のひとつとして挙げられるのが糸かがり製本(その名の通り、まとまった折丁を糸で束ねる方法)。

主に手帳や日記などに用いられる手間がかかる製法なのですが、ノートが180度フルに開くことと丈夫さにこだわるため採用しています。

折られた「MD用紙」は、1折ずつ糸かがり機に入れられます。

次にかがられた「MD用紙」の背をくっつけ、安定させるために背固め、つまり糊づけを行います。

11折にまとめた「MD用紙」は、背を下にして糊がついたローラーの上を通っていきます。

ここで重要なのは糊の塗布量。

塗り過ぎると開きが悪くなってしまい、その逆だと強度が失われてしまう。

繊細な刷毛塗りを完全に再現した機械で、微妙な塩梅を調整しているのです。

糊がつけ終わるとすぐ熱で乾かし、余分な糸を落としていきます。

通常のノートはこの後に寒冷紗が貼られるのですが、『MDノート』の場合、それだと強度が足りません。

そのため見返し(中身と表紙をつなぎ合わせる役目をもつ、表表紙の裏側に貼られるもの)の後に和紙を貼るのです。

表紙に当たる、“MD PAPER” の刻印が押されたハネを貼っていきます。

先で“表紙がない”と説明しましたが、要するにこのハネは中身をくるむのではなく挟んでいるだけ。

ノートとしての形を成り立たせているのは糊、和紙、そしてこの後に貼られる寒冷紗の3つの要素なのです。

単調と思える流れのなかで非常に大切なのが、塗布後の5、6秒の間。この間を設けることで、糊の接着力が増すと言います。

形がほぼできあがったら余分なところをカットする三方裁断、『MDノート』のもうひとつのアイコンであるカラフルなスピンづけ、検品しパラフィン紙で包んだら工程は終了です。

水の叩解によってドロドロになったパルプから、幾重もの工程、大勢の人、いくつもの機械が関わってできあがった『MDノート』は生き物。

人が鍛えたり、休んだりするのと同じように、ここまでご説明した各工程の間で寝かしとプレスを度々行っています。

まず折りの後にならしと呼ぶプレスの工程があります。重しを乗せて寝かせ、糸かがりをした後には背の部分をすぐにプレスする。

糸かがりの後のプレスは最も重要で、どんなに工場が忙しくても最優先に作業します。

さらに見返し、ハネを貼った後にもプレスし、スピンづけが終わったら検品まで最低1週間は寝かせます。

美しさと機能性を融合させるためには、要素を削らなくてはならない。

しかし、一つひとつの工程を丁寧に進めなければ、製品として安定させることはできません。

検品以外は基本的に機械による作業で進められます。

カシャンカシャン、シャーシャーと大きな音を鳴らし、リズミカルかつ高速で進んでいくプロセスは、当然機械でしか実現することができないでしょう。

しかし、それをコントロールし、製品のクオリティを守るのはやはり人です。

無垢な仕立ての『MDノート』は汚れや傷が非常に目立ちやすいため、それぞれの工程ごとに職人が検品を行い、また、気候によって糊の水分量が変わるため微量の水を足しベストなバランスを保つ必要があります。

スピンづけに関しても、繊細なため機械ですべてをまっすぐつけることは不可能。

ずれが生じたら人が貼り直し、美しい背に仕上げていきます。

『MDノート』は毎日、少し違う環境、状況で生み出されるのですが、人が目で見て、手で触り、その環境、状況を感じ取り、機械と協働しながら調整をしているのです。

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